インドを脱出! ネパールはポカラへ
二日後(7月14日)、近くにあった旅行代理店でゴーラクプルまでの列車のチケットを買った。800インドルピー(約1,600円)でした。代理店を通すと値段は高くなるとは知っていたが、またバラナシ駅まで歩いて行きたくはなかった。オートリクシャの乗るにしても片道95ルピー、往復だと190ルピーか? 代理店で買ってもそれほど変わらないだろう。
ゴーラクプルへの列車は夕方(17:00)と深夜発(00:35)の便がある。夕方発の便だとゴーラクプルには夜遅く(22:40)に着いてしまう。ゴーラクプルで一泊しなければならない。そこで深夜発の夜行便で行く事にした。ところが夜行便のチケットはすでに売り切れてしまっていた。仕方なく夕方発の便のチケットを買って宿に戻るのだが・・・
宿に戻って、はっと思い出した。インドの列車には外国人のためのチケット枠が用意されていて、旅行代理店では買えなくても外国人専用売場だと買えたりするとの噂だ。あくまで噂だが、駅のチケット売場で買えば深夜発のチケットが買えたかもしれない。面倒でも駅まで行って買えば良かったか!? でも、キャンセルするのも面倒だ。ゴーラクプルには駅前に数軒ホテルがあるようなので、まあ、何とかなるだろう。
さて、移動日(7月16日)である。バラナシには6泊と長く滞在してしまった。特に何かあった訳ではないがゲストハウスが快適だった。午後2時頃、イシイさんと別れ宿を出る。イシイさんはこの後バラナシの少し北にあるサールナートの瞑想センターで瞑想修行するとの事。瞑想修行は20日間、誰とも話さず、ひたすら瞑想をし自分自身と向かい合う。もちろんインターネットも出来ない。完全に外部から遮断される。「今回の目標はタバコをやめる事だ!」イシイさんはかなりのヘビースモーカーだった。瞑想修行中はタバコも吸えない。「20日間、我慢できたら禁煙できるでしょ!(僕)」「いや~、前回は終わってからの一服がうまかった!(イシイさん)」今回2度目の挑戦ですか?! さて、やめる事は出来たのでしょうか?
バラナシ駅までは自転車リクシャに乗って行く事にした。道は常に渋滞している。オートリクシャも自転車リクシャもそんなに変わらんだろう。早速、運賃の交渉をする。バラナシ駅からここまでオートリクシャで95ルピーだったから、自転車リクシャだともっと安いに違いない。しかし、運賃を聞くと「100ルピーだ」と言ってきた。そんなことは無いだろう! オートリクシャより高いではないか!
そこで、他の自転車リクシャとも交渉するがやはり100ルピーだった。いや、もっと安いはずだとゴネていると、周りにいたおばちゃん達が「駅まで100ルピーなら妥当だよ」みたいな事を言っている。どうも相場は100ルピーみたいなのだ。なぜ、駅からここまでは95ルピーで、ここから駅までは100ルピーなのか? インドは不思議でいっぱいである。
バラナシ駅に着くと、とりあえず外国人専用のチケット売場へむかった。ひょっとしたら深夜便のチケットへの変更が出来るかもしれないと思ったからだ。しかし、列車の発車時刻まで一時間を切っていたためか、チケットの変更はできなかった。でも、どうも深夜便のチケットは残っているような感じだった。いっそう、夕方発のチケットは破棄して、新たに深夜便のチケットを買おうかとも思ったが、やっぱりもったいないのでやめた。トコトン貧乏性でいけない。
列車の発車時間までは外国人専用のチケット売場で待つ。外国人専用の売場にはゆったりとした椅子があり、エアコンもありで快適な空間だった。他にもインドの駅には、エアコン付の寝台車両などの高いチケットを買った人だけ入れる特別な待合室があったりする。もちろんエアコン付の待合室である。お金を持っている人と持っていない人では待遇が段違いに違うのだ。駅ではインドの格差社会の縮図を見る事が出来る。
ゴーラクプル駅には夜の11時頃に着いた。深夜と言うのに駅は人で溢れていた。駅の前の通りにはホテルが並んでいる。とりあえず近くのホテルから一軒一軒あたって行くことにした。しかし、どのホテルも空き室は無いと断られた。ぶらぶらホテルを探して駅前をうろついていると若い男が近づいて来た。「ホテルを探してるの? 案内するよ。」と親しげに話しかけてくる。インドは本当にこの手の客引きは多い。別に安いホテルを知っているわけではない。ただ、近くにあるホテルに連れて行くだけだ。そして「俺が客を連れて来てやった」とホテルからマージンをせしめるのだ。「案内する」と言うより「着いて来る」といった感じだ。
それから4,5軒のホテルを回った。しかし、どこも「空き室はない」と断られた。お前が着いて来るから断られるのではないか、とさえ思えてくる。腹も減っていたので近くの食堂に入る。すると男も一緒に入って来た。そして一緒のテーブルに腰をかける。僕が食事を終えるまで無言で同じテーブルに座っていた。結局ホテルは見つからず、ゴーラクプルの駅で夜を明かすことになった。「駅に戻るよ」と言うと男は「バイバイ、マイ、フレンド!」と言って去って行った。
駅の中には多くのインド人が布を敷いてゴロゴロと寝ている。常に人がいるので意外と安心できる。でも、僕はさすがに寝る事は出来ず、壁に横たわり本を読んだりしていた。すると、駅員と思われる人が定期的に長い棒を持って見回りにやってきた。そして、その棒で寝てる人に横の床をバンバン叩く。まるで寝てる人を起こすかのようだった。どうも駅の中で寝るのは本当は駄目みたいで駅員が嫌がらせをしているようなのだ。そんな光景を見ながら気づけばウトウトとしていた。(続きは次のページ)