バラナシのガートと祈りの儀式プジャー
バラナシはヒンドゥー教の最大の聖地である。インドの各地から聖なる川、ガンガーを目指してヒンドゥー教徒たちがやってくる。ガンジス川沿いにあるガートと呼ばれる場所では、沐浴したり、洗濯したりとインドの人々の生活を垣間見る事ができる。その一方、すぐ横の火葬場では死体が焼かれ聖なるガンガーへ流される。「生」と「死」が隣り合う場所、それがバラナシである。
バラナシの宿「シン ゲストハウス」はガンジス川沿いに広がるガートの一番端のアッシーガート(Assi Ghat)の近くにあった。ここからメインのガートまでは約1kmぐらいか? ちょうど歩いて散策するにはいい距離だ。早速、ガートめぐりでもしてみようと部屋を出るが、外はあいにくの雨だった。観光する気も萎えてしまう。
2階のテラスに出てみると一人の日本人がいた。「どこかで会いましたよね?」ブッタガヤの仏心寺の宿坊で入れ替わりになった男性でした。名前をイシイさんと言う。歳は僕より少し若いぐらいか? ブッタの足どりを辿りインドを旅しているとの事だ。しばらく話し込む事となりました。久しぶりの日本語で会話もはずむ。
イシイさんはすでにインドには1ヵ月ぐらい滞在しているそうだ。インドの携帯電話を持っていて、ちょくちょくと電話が掛かって来る。「ブッタガヤには10日ほど居てね。そこで知り合ったインド人の女性の家にホームステイしてたんだけど・・・」どうも電話の主はその女性からのようだ。「一日、何回も電話が掛かってくるんだ。ほんと迷惑している」のだそうだ。「きっと、気があるんだよ」と冷やかすと、「いや、目当てはお金なんだよ。それが怖くて仏心寺の宿坊に移ったんだ。」イシイさんは、だいぶ旅慣れされた方で面白い人です。
「ガヤからバラナシまでのチケットはいくらだった?」と聞かれたので「190ルピーだったかな?」と答えると「僕は300ルピーぐらい掛かったよ。ブッタガヤの観光案内所でチケット売場の場所を聞くと、旅行代理店でしか買えないって言われてね。そこで買ったんだけど・・・」いやいや、僕はその観光案内所で隣のチケット売場を教えてもらったんだけど・・・
「駅からここまではいくらだった?(イシイさん)」
「300ルピーも取られたよ。ガヤからの運賃よりも高かった。(僕)」
「おかしいなあ。僕は95ルピーだったよ。(イシイさん)」
げげー、3倍もボラレタのかな? でも、オートリクシャ乗り場のプリペイド運賃表には確かに300ルピーと書いてあったけどなあ。
よくよく話を聞くと、イシイさんはバラナシ駅まで列車で移動して、バラナシ駅からオートリクシャに乗って来たとの事。ガヤからの列車はバラナシ駅までは行かず、少し手前のムガル・サラーイ駅に到着する。なるほど、バラナシ駅まで列車で移動すれば良かったのか!
「バラナシの後はどこに行くの?(イシイさん)」
「カトマンズかポカラに行こうと思っているんだ。バラナシから700ルピーでツアーバスがあるみたいなんだよ(仏心寺での『地球の歩き方』の情報)(僕)」
インドに入ってからは常にインドからの脱出計画を考えていた。隣のネパールへ逃げ込む計画です。イシイさんは、バラナシの少し北にあるサールナートの瞑想センターで瞑想修行をして日本に帰る予定らしい。でも折角だから少し、東南アジアのタイ辺りでゆっくり過ごして帰ろうかな、との事。
「タイのゲストハウスはどんな感じだった?(イシイさん)」
「インドよりは確実にいいよ!(僕)」
この後、一緒にガードを見に行く事となったのだが、相変わらず雨は止む気配を見せない。ガンジス川沿いのガートに出ると強い風が吹きつけ、とても観光どころではなかった。あえなく宿に戻る事となるのだが・・・
道路は膝近くまで水に漬かっており、とても歩くことが出来なかった。宿までは僅かな距離だったがリクシャを捕まえて宿に戻る。ガートの散策は明日にする事にした。(続きは次のページ)